検査について

血液検査、レントゲン検査、エコー検査、尿検査、糞便検査、眼圧測定などは院内で行います。
上記の検査は特別な場合を除き、予約なしで診察時間中にできます。
血液検査、レントゲン検査、エコー検査は検査当日半日絶食して行うとより精度の高い情報が得られます。
前ホームページの検査・治療のことのサイトもまだ残してありますので参考にしてみてください。

血液検査

 検査の代表と言えるでしょう。血液中の成分を測定することによって身体の中で起こっていることを推測できます。
 何と言っても最大の利点は
材料を採取するのに動物に負担や危険が少ない。
圧倒的な情報量
 この2点です。身体中を駆け巡っている血液だからこその利点ですね。
 貧血、脱水、栄養状態、腎臓機能、肝臓機能、ホルモンの量等々調べることができる検査項目は多岐に及びます。院内にある検査機器で測定できるものは院内で行い、特別な項目は検査センターに依頼しています。
 空腹時に採血するとより確実な結果が得られます。できれば半日ほど食べ物を食べさせないで来院して下さい。

糞便検査

 「検便」です。糞便の状態、寄生虫卵の有無、原虫類の有無、細菌の状態などを検査します。近い時間に排泄された糞便を持参いただき検査を行います。原虫、細菌などをより確実に調べるためには糞便を採取してからすぐに顕微鏡で見る必要があるので、動物を連れてきていただくことになります。
 寄生虫卵の検査であれば、糞便だけで検査できるので、動物にかかる負担は最小限で済みます。ただし寄生虫“卵”を見ているのであって寄生虫そのものを見ているわけではないので、精度は少し落ちます。つまり、例えば、感染したばかりでまだ虫が卵を産んでいなければ、虫がおなかの中に存在しても検査に引っ掛かってこないということが有り得る。検査を何回か繰り返すことで取りこぼしは少なくなります。

尿検査

 尿のPH、蛋白量、潜血、ケトン体、ビリルビン、糖、比重などを測定します。細胞成分、結晶の有無などは顕微鏡で直接観察します。さらに場合によっては、細菌培養感受性検査、特殊蛋白の定量など検査センターに依頼することもあります。
 尿路の感染や炎症の有無、腎臓機能の評価、尿路結石に対する食事管理の成否などの指標にすることができます。ただ、万能な検査ではありませんので、他の検査等と併せて動物の状態を評価します。
 採尿方法は、自然排尿を採取する、カテーテルを入れて採尿する、膀胱に直接針を刺して採尿する等ですが、自然排尿を採取してきてもらうことが多いです。この方法だと動物にストレスがかからない。ただし、採るのが難しかったり、細菌が混入する可能性がある、採ってから検査までの時間がかかるなどのマイナス面もあります。目的によっては、直接膀胱の尿を採取して検査する必要が生じます。
 動物に負担が少なく、有益な情報が得られる有効な検査だと思っています。

レントゲン検査

血液検査とならんで実施機会が多い検査です。
院内で行います。撮影時に被爆するエックス線量は動物の健康には影響を及ぼしません。
特別な場合を除いて、診察時間中におこないます。予約は不要です。できれば半日絶食した状態で撮影するとより情報が多くなります。
レントゲン検査の利点は直接目で見ることができない身体の中の様子を映し出してくれることです。ただし「影」です。
最近では機器の進歩も目覚ましく、CT、MRI、腹腔鏡、内視鏡など身体の中の様子を詳細に現わしてくれる検査もあります。その中で、レントゲン検査の優れている点は、他の検査に比べて情報を得るための動物の負担が圧倒的に少ないところです。撮影は数秒で終わります。ほとんどの場合、麻酔をかける必要もありません。
今後検査機器の進化がさらに進んでも、レントゲン検査の必要性は揺らぐことはないでしょう。

超音波画像検査(エコー検査)

超音波とその反射を利用して身体の中の状況を「影」として映し出します。直接眼で見えない所を映し出してくれることはとても有意義なことです。ただしあくまで「影」です。
エコーの利点としては、
動きが確認できる。心臓、腸管などを診るときに有効です。
臓器の内部を描出できる。実質臓器(肝臓、腎臓など)はレントゲンよりも詳細な情報が得られることが多いです。
エコーの欠点としては、
骨、空気があるときれいな映像が得られない。骨、肺などの検査には不向きです。
一度に広範囲の映像が得られない。どうしてもレントゲンに比べると検査に時間がかかってしまいます。
毛を刈らないとならないことが多い。人間だと毛がほとんどないので楽なんですけどね。

身体に傷をつけないで、影といえども見えない部分の映像を映し出してくれる大変意義のある検査です。少しの間、ガマン😣してもらいましょう。
一部の臓器だけを検査するときは診察時間中に行います。腹部全体を検査するとき、時間をかけて詳細に検査するとき、検査にあたって麻酔もしくは鎮静をかけるときは予約していただき時間をしっかりとって検査します。ほかの検査と同様、空腹時の方がより精度の高い情報が得られます。

CT、MRI検査

当院では器械がないので大学病院に依頼して行ってもらっています。
脳、脊髄に異常がある可能性のある時にお願いしています。
全身麻酔が必要、費用が高価などの問題はありますが、骨に囲まれた部分を画像化して表現してくれる優れた器械は他には存在しません。非常にありがたい。そして、その得られる情報の精度も高い。
手間、費用をかける価値は十分あると思います。

病理組織検査

 細胞の形態を顕微鏡で観察し診断する検査です。
 とても精度が高く確定診断に至ることが多いです。
 専門性が必要となる検査なので、当院では動物の病理検査専門医に依頼して検査してもらっています。
 腫瘍の診断、病態の診断などがわかります。いづれも今後の治療方針を決定する上で重要な情報です。
 ただ、検査材料を採取するのに、動物の身体から組織を取り出さなければならない。いくらかの危険と負担を動物に強いることになります。

細胞診

 文字どうり細胞の形態を観察する検査です。上記の病理組織検査は検査材料が組織、すなわち「細胞の塊」を観察するのに対して、細胞診は細胞を「拾い集めて」観察するといったイメージでしょうか。目指すところは病理組織検査と同じですが、細胞診の方が精度が低い。ただ、細胞診の方か、検査材料を採取するのに動物に負担が少なく済みます。
 日常の診療でよく行う細胞診の例をあげてみると、

  • 外耳炎で耳垢の細胞を観察する。
  • 尿検査で尿中の細胞を観察する。
  • 腫瘤に細い針を刺して細胞を採取し観察する。
    などです。
     炎症があるのか、細菌感染が疑われるのか、腫瘍があるのか、などの情報が得られます。判断に迷う時は、病理検査の専門医に診断をお願いすることもあります。
     精度の点で病理組織検査には劣りますが、検査材料採材に動物にかかる負担が少ないことはとても魅力です。

細菌培養感受性検査

 細菌感染が疑われる時に、その細菌の特定、さらにその細菌に有効な抗生物質は何かを調べるための検査です。当院では、検査センターに依頼しています。
 通常、細菌感染が疑われる時は、広域スペクトルの抗生物質(いろんな細菌に有効な抗生物質)を投与します。これで治まってしまえば問題ありません。しかし、なかなか治らない場合、耐性菌(抗生物質が効かない菌)が増殖している可能性があります。その場合には、敵である細菌をしっかり調べて、効果のある抗生物質を特定して投与します。
 尿、耳垢、鼻汁で行うことが多いです。

フルオルセイン染色検査

 目の表面(角膜)に傷があるかどうかを確認する検査です。染色液を目につけて、特殊なライトを当てて観察します。検査自体に痛みはありませんが、角膜に傷があると目が痛いので、嫌がることがあります。角膜に傷があるかないかで治療が異なる場合があるので、必要なときにはこの検査で確認します。

眼圧測定

 「眼球の張り具合」を計ります。専用の検査器械で測定します。眼圧が高い場合は「緑内障」が疑われます。眼圧が高いと、不快感があったり、放置しておくと視力に影響が出てくることがあります。意外と測定値が予測できない(肉眼所見と検査結果が異なる)ことが多いと思う。
 動物が大人しくしていてくれれば、不快感なく検査できます。

内視鏡検査

 小型カメラを挿入して直接現場を見る検査です。消化管の内視鏡検査は「胃カメラ」と言われた方がわかりやすいかもしれません。食道、胃、十二指腸、大腸、気管、腹腔内など、さらには、鼻腔内、関節腔内、膀胱内なども検査対象になります。細い所を見るのにはそれなりの設備が必要です。検査動物の大きさも検査の可否に影響します。
 現場を直接目視できること、そのために身体を傷つける必要がないことは、内視鏡検査の最大の利点です。場所によっては、病理検査のための組織を採材したり、異物を摘出できることもあります。
 全身麻酔が必要なこと、検査できる範囲が限られていること、設備が高価なことが、デメリットです。当院では残念ながら設備がない。ですから、他の情報を総合的に考え、本当に内視鏡検査が必要かどうかをしっかり見極めた上で、二次診療施設に依頼しています。

ACTH刺激試験

 副腎皮質の機能を調べる検査。血液中のコルチゾール値を測定します。
 まず採血、そして副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を注射して1時間後に再び採血。2回の値の差を調べて診断します。
 できれば、午前中に行うのが望ましい。当院ではあらかじめ連絡をいただき、1回めの採血が9:00〜10:00になるように来院していただいています。

検査に対する当院の考え方

日常診療で動物に検査を行うことは多々あります。当院では下記のことを留意した上で検査を行っています。

  • 検査は話すことのできない動物に代わって病態を表現してくれる。
    診療の上で動物の声なき声を聞くことはとても重要です。検査はそのための大切な要素です。
  • 検査は動物の体の中で起こっていることを客観的に表現してくれる。
    各臓器の形、機能などを画像化もしくは数値化してくれます。
    これは我々獣医師にとっても飼主さんにとっても、とても有益な情報です。
  • 検査は症状が出る前の身体の異状を教えてくれる。
    肝臓、腎臓など沈黙の臓器と言われる所は、症状が発現したときは病状がかなり進行していることが多い。事前に異常を察知すればそれだけ早期のうちから対処ができます。
  • 検査によって得られる情報の精度が高ければ高いほど、その検査には負担と費用がかかる傾向にある。
    最近では検査機器の発達で、動物でもいろいろな検査ができるようになり、その結果得られる情報は非常に精度が高いものです。CTとかMRIなど身体の奥深くの状況を正確に映し出してくれます。しかし、動物に全身麻酔を施さなければなりません。どの検査が必要か、その検査で得られた結果でどんな治療が可能か、その治療でどこまで回復の可能性があるのか、その辺りは常に考えていたいと思っています。
  • 検査を受ける動物にはストレスがかかる。
    どの検査でも、多かれ少なかれストレスはかかります。ストレスがかかるマイナス面と検査結果が得られるプラス面、この比較は常に行っています。
  • 検査はあくまで検査であって治療ではない。
    検査結果はあくまで「指標」であって治療の目的ではない。もちろん治療ではない。検査結果の改善にこだわりすぎることの無いよう、動物全体の状態をよく考えて診療を進めていきたいと考えています。